名前が数字に変わった日

具現化されてゆく地獄と戒め

2023-08-03から1日間の記事一覧

名前が数字に変わった日11

次の日、いつも通り六時半に起床する 布団を片付け、歯を磨く 一連のルーティンが終わり 独房に戻り、格子の隙間から窓ガラス越しの空の色を眺めた。 取り敢えず官本も入れてはいたが 一ページも開かないまま床に置いていた 一時間が過ぎ 二時間が過ぎる い…

名前が数字に変わった日10

本来、保釈の進捗状況は 伝える義務も必要も警察には無い それは本来は弁護士の役目になる それでも、こうして教えてくれたのは 何十回としてきた取り調べの中で子供や家族への愛を話し続けてきた故の情みたいなものだったのかもしれない 何の偶然だったのか…

名前が数字に変わった日9

狭い取り調べ室で姿勢を正し その内線電話が終わるのを待った。 受話器を置いて 『早くて今日 遅くても明日には保釈されそうだよ。』 小さく笑いながら言われた。 最初、まるで話の内容が入って来なかった 少し時間差で意味が追い付いてくる ずっと待ってた…

名前が数字に変わった日8

最大拘留期間が終わった それと同時に起訴を知らせる通達が届いた。 ここからは二通りの道に分かれる 約一ヶ月後の刑事裁判日まで 留置所か拘置所で待つか 或いは保釈申請してもらい 一度、外へ戻されるか 自分の場合は後者だった。 もちろんその手続きは 金…

名前が数字に変わった日7

一ヶ月の留置所生活で 心の支えになっていたのが"面会"だった。 数日に一度 それもたった十五分という短い時間の中で ガラス越しに居る身内に これでもかって程の言葉を投げ掛けた。 何度泣いただろう それ以上に何度泣かせただろう あんなに当たり前だった…

名前が数字に変わった日6

十六日目を境に みるみると体の肉が削がれてゆく。 水ばかり摂ってるせいで 日に日に排出物は液状に変わってゆき 二十日を迎えたあたりには 既に無色に近い水になっていた。 日課であった布団の出し入れが辛くなり 何となく続けていた筋トレは体が言うことを…

名前が数字に変わった日5

決して自分は悲劇のヒロインなんかじゃない。 罪を犯して それを裁かれる過程の中で今ここに居るだけ。 誰かに優しくしてもらいたいなんて甚だしい 決して考えてはいけない"逃げ"でしかない。 自分はもっともっと反省しなければいけない 拘留十六日目 この日…

名前が数字に変わった日4

時間の流れが恐ろしく遅く感じる。 外に居た頃の一日がまるで一週間に変わったような感覚だった。 毎日貸し出される三冊の官本も まるで面白さを感じなくなり、それでも時間を少しでも早く進めたくて懸命に文字を目で追うが気付くと無意識のまま数ページ読み…

名前が数字に変わった日3

逮捕から一日経ち、拘留が決まり さらに十日経ち、拘留延長が決まった。 最大拘留期間の二十日間だ。 その節目節目の度に "もしかしたら"なんて情けない期待をしては 当然の結果に肩を落とした。 日本の警察だって そんなに甘く出来てる訳じゃない。 自分自…